日本代表がもっと面白くなる!「ハイプレス」をやさしく解説
「ハイプレス」は、相手のゴールに近い高い位置から一気にプレッシャーをかけてボールを奪いにいく守備のやり方です。日本代表がこのハイプレスをうまくハメると、強豪相手でもボールを高い位置で奪って、一気にシュートまで持ち込むシーンが増えます。この記事では、ハイプレスの意味や狙い、メリット・デメリット、日本代表(森保ジャパン)のハイプレスの特徴、そして試合観戦でどこを見るともっと楽しくなるかを、難しい戦術用語抜きでお話していきます。
ハイプレスとは?初心者にも分かる基本イメージ
どのエリアで守る戦術なのか
ハイプレスは、一言でいうと「前から守る守備」です。もう少し具体的に言うと、相手のセンターバックやサイドバックがボールを持った瞬間から、日本代表のフォワードや攻撃的な選手たちが一気に寄せていく守備のことを指します。自分たちのゴールに近いエリア(ペナルティエリアの周り)ではなく、相手ゴールに近いエリアで守備をするイメージです。
よくある場面としては、相手のゴールキックや最終ラインからのビルドアップに対して、日本の前線が一気に走ってプレッシャーをかけ、パスコースを切りながらボールを奪いにいくシーンです。より平たい言い方をすると、「相手にゆっくり攻撃を組み立てさせないために、前からガンガン走って追い回す守備」と思ってもらえればOKです。
何のためにハイプレスをするのか(狙い)
ハイプレスのいちばん分かりやすい狙いは、「ゴールに近いところでボールを奪って、一気にシュートまで行くこと」です。相手陣地でボールを奪えれば、相手の守備陣形が整う前に攻められるので、少ないパス本数で決定機を作りやすくなります。
特に、日本代表が強豪と戦うときは、相手にボールを持たれ続けるとどうしても守備に回る時間が長くなりますが、ハイプレスでボールを奪えれば「守る時間を減らして、自分たちが攻める時間を増やす」という効果もあります。もう一つ大事な狙いは、「相手にミスをさせること」です。プレッシャーを強くかけられると、相手は苦し紛れのロングボールを蹴ったり、パスミスをしたりしやすくなります。そうやってボールを回収し続けることで、試合の流れや主導権を握りやすくなるわけです。
ハイプレスのメリット・デメリット
高い位置でボールを奪うメリット(ショートカウンターなど)
ハイプレスの一番のメリットは、「ショートカウンター」がやりやすくなることです。ショートカウンターとは、ボールを奪った瞬間に、少ないパスで素早くゴールに向かう攻撃のことです。相手陣地、特にペナルティエリアに近い位置でボールを奪えれば、そのまま1本のスルーパスやクロスで決定機につながるシーンが増えます。
高い位置で奪うことで、相手の守備の枚数が整っていない状態で攻められるので、「少人数でも点を取りやすい」というのも大きなメリットです。もう一つのメリットは、「メンタル的な主導権を握りやすい」ということです。前からどんどん行く姿勢は、見ている側にも「日本が押している」という感覚を与えますし、相手にとってもプレッシャーになります。
体力面・カウンターリスクなどのデメリット
もちろん、ハイプレスにはデメリットもはっきりあります。まず分かりやすいのが「体力面の負担」です。相手の最終ラインまで走って守備をするので、90分間ずっと同じ強度で続けるのはほぼ不可能です。時間帯によって強度を上げ下げしたり、選手交代で前線のフレッシュさを保ったりする必要があります。
もう一つは「カウンターのリスク」です。前から行くということは、自分たちのDFライン(最終ライン)は高く設定されることが多く、その背後に広いスペースが生まれます。そこを速い選手に走り込まれると、一気に決定機を作られてしまう危険があります。特に、前線だけがプレッシャーに行って中盤や最終ラインがついてこないと、ライン間に大きなスペースが空き、「ハイプレスがハマらず、逆に危ない」という状態になりやすいです。
ミドルプレスやロープレスとの違い
守備位置による違い
ハイプレスを理解するには、「ミドルプレス」「ロープレス(ローブロック)」との違いも押さえておくと分かりやすいです。
- ハイプレス:相手陣地、高い位置で守る。相手CBやSBに強くプレッシャー。
- ミドルプレス:ハーフウェーライン付近で待ち構え、そこから一気にプレッシャーをかける守備。
- ロープレス(ローブロック):自陣深くにブロックを作って、ゴール前を固める守備。
日本代表も、相手や試合状況によってこの3つを使い分けています。「どこで守備のスイッチを入れるか」の違いが、ハイプレス・ミドルプレス・ロープレスの一番のポイントです。
ゲーゲンプレスとの関係
よく似た言葉として「ゲーゲンプレス」という用語も耳にするかもしれません。ゲーゲンプレスは、ドイツ語で「カウンタープレス」といった意味で、「ボールを失った直後に、すぐ周りの選手が一斉にボール保持者にプレッシャーをかける守備」を指します。つまり、「どのエリアから守るか」というよりも、「ボールを失った瞬間にやる守備」というタイミングの考え方に近いです。
一方で、ハイプレスは「高い位置から守備をスタートすること」が主な意味なので、守備の開始位置の考え方です。実際の試合では、「高い位置でボールを失った直後にゲーゲンプレスで奪い返しつつ、全体としてはハイプレス気味に戦う」といった組み合わせもよくあります。日本代表も、前線の選手がボールを失った瞬間にすぐ切り替えて奪い返しに行くシーンが増えており、「ハイプレス+ゲーゲンプレス的な守備」を見せる試合が増えています。
日本代表が採用するハイプレスの特徴
ハイプレスがハマった試合の例(アメリカ戦やメキシコ戦、ブラジル戦の後半など)
森保ジャパンは、カタールW杯以降、強豪相手にも積極的にハイプレスを仕掛けるようになりました。代表的な例として語られるのが、アメリカ戦(欧州遠征)、メキシコ戦(国際親善試合)、ブラジル戦の後半(親善試合)といった試合です。
メキシコ戦では、日本のセンターフォワードが相手ボランチ(アンカー)を消しながら、シャドーの選手が相手センターバック2枚にハイプレスをかける形が機能し、「強豪相手にハイプレスが通用した」と評価されました。ブラジル戦でも、前半は自陣にブロックを敷く時間が長かったものの、後半にハイプレスを強めたことで相手のビルドアップにミスを誘い、流れを引き寄せるシーンが見られました。
このとき、日本は3バック+ウイングバックの3‐4‐2‐1のような形で、両ウイングバックが相手最終ラインまで出ていく大胆なハイプレスを採用していた時期もあります。「後ろ3枚+前線の思い切ったプレッシング」は、森保ジャパンのハイプレスの象徴的な形の一つと言っていいでしょう。
強豪相手で見えた課題(強度・連動・時間帯の制限など)
一方で、強豪相手にハイプレスを続ける難しさも、同じ試合で浮き彫りになりました。まず、「プレスの強度を90分キープするのは難しい」という体力的な問題があります。前半はハイプレスがよく機能していても、相手がロングボールを増やしてきたり、テンポを変えてきたりすると、前線から最終ラインまでの走る距離が増え、徐々に守備が後ろ向きになってしまうことがあります。
また、「連動」の部分も重要な課題です。前線だけが勢いよく出ていっても、中盤や最終ラインがついてこないと、ライン間にスペースが空き、強豪のうまい選手にそこを使われてしまいます。さらに、「どの時間帯でどれだけハイプレスをかけるか」という配分も、日本代表の今後のテーマです。90分フルでハイプレスは現実的ではないため、「立ち上がりの15分だけギアを上げる」「リードした後はミドルプレスやローブロックに移行する」など、試合の流れに応じた使い分けが求められています。
ハイプレスを知ると日本代表の試合はこう変わる
テレビ観戦で注目したいポイント
ハイプレスのイメージがつかめてくると、日本代表の試合の見え方がかなり変わります。テレビで観るとき、次のようなポイントを意識してみてください。
- 相手のゴールキックや最終ラインからのパス回しのとき、日本の前線は「どこから」守備を始めているか。
- センターフォワードが、相手センターバックを追いかけるだけでなく、「ボランチのパスコースを切る動き」をしているかどうか。
- サイドの選手(ウイングやウイングバック)が、思い切って相手サイドバックのところまで出ていくシーンがあるか。
- ハイプレスに行ったあと、中盤や最終ラインがしっかりついて行って「チーム全体で押し上げられているか」。
また、ボールを奪った後にも注目です。高い位置でボールを奪った瞬間、日本代表が「まず縦に速いパスをつけるのか」「逆サイドに素早く展開するのか」、そういった選択一つ一つがショートカウンターの質に直結します。「今のはハイプレスからのチャンスだな」と気づけるようになると、1試合の中での楽しみがぐっと増えます。
北中米W杯や今後の代表戦に向けて期待したいこと
森保ジャパンは、カタールW杯を経て、強豪相手にも自分たちから主導権を取りにいくサッカーを目指しています。その中心にあるのが、やはりハイプレスです。
前田大然のように、前線からの守備で相手を追い回し続ける「最前線のディフェンダー」とも言える選手は、日本のハイプレスにとって大きな武器です。彼の全力スプリントと守備範囲の広さは、「守備から流れを変えるフォワード」として非常に頼りになる存在です。一方で、鎌田大地のように、相手ボランチの位置を消しながら、ボールを奪った瞬間には自ら得点に絡める選手も、ハイプレスとショートカウンターのつなぎ役として重要です。
直近の日本代表では、「プレスの強度をどこまで上げ続けられるか(スタメン+途中出場選手の総合力)」、「ハイプレスが外されたときのプランB(ミドルプレスやローブロックへの切り替え)」、「一人一人の守備だけでなく、チーム全体の連動性」といった点が課題として語られています。それでも、強豪相手にハイプレスから試合の流れを引き寄せる展開を見せてきたことで、「日本も世界のトップと殴り合える」と感じさせてくれる内容の試合も増えてきました。
北中米W杯や今後の代表戦では、前田大然のような走力と守備意識の高いフォワード、鎌田大地や久保建英のように、ハイプレス後のショートカウンターでラストパスやフィニッシュまで持っていける選手、さらに最終ラインやGKまで含めた全員守備がどこまで完成度を高められるかが、大きな見どころになってきます。
まとめ
ハイプレスは、「相手のゴールに近い高い位置から守備を始めて、ボールを奪い、そのまま一気に攻め切る」ための守備の考え方です。メリットは、高い位置でボールを奪えることでショートカウンターが増え、試合の主導権を握りやすくなること。デメリットは体力的な負担と、かわされたときのカウンターリスクです。
森保ジャパンは、アメリカ戦やメキシコ戦、強豪との試合の後半などで、このハイプレスを武器に互角以上に渡り合ってきましたが、その一方で「強度」「連動」「時間帯のコントロール」といった課題も見えてきています。
前田大然のように前から走り続ける選手、鎌田大地のように賢くポジションを取りながら得点にも絡む選手が、どのように組み合わさって日本のハイプレスが進化していくのか。次に日本代表の試合を観るときは、「今はどこから守っている?」「誰がスイッチを入れている?」と、ハイプレスの視点でピッチ全体を眺めてみてください。きっと、これまでなんとなく見ていたシーンにも意味が見えてきて、「日本代表ファンとして、次の試合がますます楽しみになる」はずです。



